セイチェント4 セミナー「歴史と共に弾く・聴く~過去の楽譜をより理解するために~」
セミナー講師:松本直美(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ音楽学部専任講師)
2015年「マスタークラス」、2016年「ワークショップ」、2018年「レクチャーコンサート」を企画したThird Ear Projectがお送りするセイチェントシリーズ第4弾。今回は「番外編」として、あえて17世紀から少し離れ、18~19世紀の楽曲をとりあげます。J.S.バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、ブラームス。それは私たちが普段もっともよく演奏し、また耳にする頻度の高いレパートリー。しかし、こういった楽曲に触れた際、次のような疑問をお持ちになったことはないでしょうか。
「一つの楽曲なのに楽譜を買おうとしたら色々な版があってどれを選んでいいかわからない!」「どうして同じ曲なのに版によって違いがあるの?」「原典版ってどうして曲想記号がついていないの?どうやって演奏したらいいの?」「スタッカートやスラーっていつも同じ方法で処理していいの?」このセミナーはまさにこういった疑問の解決の糸口を提供するためにあります。
私たちが今、学校やレッスンで習う、もっとも基本的な楽譜の読み方は、音楽を学ぶ場が学校という形で組織化された19世紀における楽譜理解に基づいています。しかし歴史を辿ると、楽器や歌唱法の変化や発達に伴い、楽譜も少しずつ変遷を続けてきました。そのため、一つの記号や楽語であっても時代によって意味が少しずつ違うことはよくあります。さらに作曲家たちはそれぞれ、自分が学んだ、一世代前の記譜法の慣習に大きく影響されながら楽譜を書いています。翻って、今、楽譜が持つ本当の意味を捉えるには、歴史を紐解きながら再考することが必要なのではないでしょうか。この意味において、今回のプロジェクトも、私共がこれまで提唱してきた「古楽的アプローチ」に合致するものだとThird Ear Projectは考えています。
とはいえ、堅苦しいお勉強会ではありません!これまでのセイチェントシリーズ同様、「知的エンターテインメント」。スライド史料をたっぷりとご覧頂き、ビデオや音源もご紹介しながら、くつろぎつつ真摯に学ぶ場をご提供します。今回のキーワードは「様式感とは何か」。バッハはバッハとして、ショパンはショパンとして理解し、それを演奏、受容に活かすにはどうしたらよいかをご一緒に考えてみませんか。