RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語（映画） 無料フル動画配信情報！Netflixやhuluで見れる？

中井貴一さんと高島礼子さんが演じる中高年夫婦が理想的です。そして娘役の本仮屋ユイカさんと中井さんの母親役の奈良岡朋子さんも素晴らしい家族を演じています。島根の美しい風景と懐かしさが感じられる地方鉄道を見ることができ、大変贅沢な映画です。小さい頃抱いていた夢が実現できる喜びを描いているので、見終わった後、心地よさを感じることができます。

奈良岡さんの病気がきっかけで、故郷に帰り運転士をしながら母親の看護を行うのですが、中井さんが東京での自分の仕事に疑問を持ち始めた時期だったので、奈良岡さんがそんな息子を助けるために呼び戻した感じがします。母親の大きな愛情が表されています。
一方、プロ野球選手になるという夢を怪我で諦めた三浦貴大さんが、中井さんの同僚として登場します。はじめは夢を掴みかけている中井さんに素っ気ない態度をとりますが、中井さんの謙虚な人柄や真摯に運転士になろうとする態度に影響を受け、少しづつ態度が変化していく姿も微笑ましいです。

そして、終盤の楽しそうに少年野球のコーチをしているシーンは、違う形で夢を実現し始めたと感じられ感動的です。
中高年になってからの再就職の難しさや地方鉄道ならではの課題なども描かれていて、また、京王電鉄での研修所風景も見ることができ、とても興味深かったです。

この映画を一言で言うなれば、何歳になっても夢に挑戦する事はできるし、自分は変わっていけるという事です。最初のシーンで肇は、リストラを任されて、親友が工場長を務める工場を閉鎖します。

親友を本社に戻すぐらいの気遣いはありますが、会社第一の肇はもの作りが好きだという親友を理解できないでいました。妻や娘ともすれ違っており、典型的なエリートサラリーマンの姿です。

高齢の母親が倒れ、田舎に帰りながらも仕事を気にする肇に娘は軽蔑の眼差しを向けます。そこに親友の訃報が入り、母親の余命宣告、自分が何をしてきたのか、どうするべきなのか自問自答する姿は、誰にでも起こり得る事です。だからこそ、このシーンは胸に突き刺さります。

実家に残された昔の電車の切符を見て、幼い頃の夢を思い出した肇は「自分自身をリストラする」といって、エリートの地位をあっさり捨てます。注目するべきは、これ以降、肇は人が変わったように柔らかくなる点です。一流企業の重役だったというポジションから肩の力が抜けたといった感じで、この変貌を中井貴一が見事に演じ分けています。故郷に戻り、夢だった一畑電鉄、通称バタデンの運転手になった肇は、乗客を思いやり、家族を思いやる良き運転手、父親、夫となりました。

それは肇がある事件で運転手を辞めようとした時に、乗客達が集まって声をかけてくれたことで証明されていますし、妻や娘が肇を見て「楽しそうだ」と笑ってくれるシーンでわかります。

そして、バタデンが出雲ののどかで美しい自然の中を走り抜けるシーンは、忘れていた心のゆとりを思い出させてくれます。何歳でも夢を追いかける事の素晴らしさ、いくらでも自分は変わっていけるんだという事を、この映画は教えてくれます。