映画「何者」は人間が持つさまざまなライフイベントの中で、特に大きな山「就活」に関しての映画です。
”青春が終わる。人生が始まる。”といったキャッチフレーズは寂しくもあり前向きでもあり、多くの就活を経験した方の心に刺さりました。
このコロナ渦での就活は、多くの就活生が不安に思っていることでしょう。
そんな就活生が抱えている”不安”な心理に深く漬け込んでくる闇をとても繊細に描いています。
今回は「何者」の気になる部分、ラストシーンで垣間見える拓人の心情に関して解説をしていきます。
映画「何者」を解説!拓人はラストシーンで自分が何者なのかを悟った
表と裏の顔を持つプライドの高い拓人は、最後の最後に本当の自分と向き合うのです。
「何者」のラストシーンで、拓人(佐藤健)が面接官にとある質問をされます。
「自分自身を1分間で表現してください。」そこで、拓人ははじめ毎度面接でいう定番セリフを言います。
しかし、今まで心の中で密かに思っていた演劇のこと、演劇時代に相棒だったギンジ(藤原季節)の話しをし始めます。
脳みそに植え付けていた定番セリフよりもぎこちない伝え方ですが、拓人自身の表情はどこか解放されたように見えました。
そして1分以上話した後に拓人は「1分では話しきれません」と面接官に伝えて会場を出ます。
その面接の結果はどうであれ、その面接を機にようやく拓人は自分と向き合い、今後自分が好きな道に進んでいけるのだと考えます。
拓人は昔演劇が好きで夢中になっていたのに、就活がきっかけで演劇を引退しました。
それでもギンジは演劇の夢を捨てずに就活をしない道を進みます。その様子を拓人は応援するどころか”サムい”とギンジを軽蔑していました。
しかし、ここで拓人は本当は演劇が好きなのに夢を追いかけることを”失敗する前提”で考えているプライドの人間だということが分かります。
就活中に拓人はエントリーシートを書くシーンでは、他人に見られないようにひっそり書いていました。
何故ならそこには、心の中では好きな演劇のことを書いているからです。
ギンジや隆良(岡田将生)等の就活をしない人、つまり普通とは違う人のことを”サムい”と感じていた拓人なのですが、その時の拓人は本当はただ、本当の自分を誰にも知られたくない、自分ですらも知りたくないから、普通とは違う人に対して軽蔑した態度をとっていたのではないかと思われます。
むしろ拓人は憧れの感情を密かに持っていたのかもしれません。
まとめ 映画「何者」解説 ラストシーンが訴える大事なこと
会場を去る拓人がビルを出た瞬間、輝かしい日の光が拓人を照らしていました。
拓人が憧れていた演劇のスポットライトを全身で浴び、拓人の気持ちにも前向きな感情が生まれていることを、たくましい背中から感じ取れます。
このスポットライトは「就活生全員」に当てはまることです。
他人と比べず、他人の悪い点も見ない、そしてそれぞれが輝ける場所で自分を探っていくことの大事さを、映画「何者」は私たちに訴えてくれました。