バケモノの子（アニメ映画）見逃し無料動画配信情報！Netflixやhuluで見れる？

熊徹と人間ながらその弟子になった九太のやり取り、バケモノの常識・人間の常識との違いや、師匠としての熊徹の九太に対する接し方の豪快さがとてもいい。始めは不慣れながらも逞しくなっていくけれど、やがて反抗期になった九太が同じ年頃の少女、楓と仲良くなって勉強に興味を持つところで、九太の中の人間だった部分とバケモノの部分のせめぎ合いとバランスの描き方、絶妙。そして、これから先勉強を続けるための大検の話が出てきたりして、人間の世界の秩序をそれとなく描き、二つの世界の平行して存在する渋谷と渋天街の違いも出している。圧巻だったのは、暴走したバケモノ界の中ではエリートだけれど実は人間の一郎彦が、九太がもう読まないと楓に返したメルヴィルの白鯨を見て鯨の形の影となり渋谷を悠々と泳ぎながら、目の敵にしていた九太を追い詰めて行くシーン。渋谷の風景の書き方がリアルで、見覚えのある場所を鯨の影が泳いでいる様は、渋谷と渋天街の境界が無くなったというより、本当はこうやって表裏一体のようにして二つの世界が存在し、影響し合っているという示唆にも思える。この作品の他にも影響し合う二つの世界というのは細田守監督が繰り返し描いているけれど、ここまで見事に目に見える形で重なって描いている作品はないと思う。そして、九太を助けるためにバケモノ界の規範に則って彼を守る刀のつくも神になった熊徹師匠のバケモノらしい愛情の表し方もとても好ましかった。

熊徹と九太の親子愛の物語。そして自分という人生にどう向き合っていくのかという物語でした。
自暴自棄だった九太が、渋天街という異世界の熊徹の弟子になり、共同生活や武術を通して己の心を磨いて成長していく様は輝いて見えました。ふとした時に人間の世界に戻れるようになった九太。そこで楓という女の子と出会います。親の敷いたレールの上を走るだけだった彼女が、九太と出会い時間を共に過ごす中で、自分の意志を第一に考えられるようになっていきます。九太と一郎彦との戦いでは、彼女は言葉の力でグッと九太の背中を押します。そんな凛とした姿に心が震えました。そして、最後の熊徹の”オヤジ”を思わせる姿に思わず涙がこぼれそうになりました。
熊徹の旧友である多々良や百秋坊もいい味出してるキャラクターでした。声優がそれぞれ大泉洋さんとリリー・フランキーさん。芸能人が声をあてることに抵抗ある人もいるかと思いますが、お二人はキャラクターによく合っていて耳が心地よかったです。一郎彦の弟、二郎丸は終始純粋でほっとさせてくれる存在でした。
猪王山と熊徹の戦いは息を呑むものでしたし、作品全体を通して戦うシーンは見ごたえのあるもので必見です。また細田守監督作品ならではの、この優しいタッチの絵も見どころの一つかなと思います。

バケモノの子のストーリー展開について、前半後半で印象が大分変わります。前半はバケモノの世界(渋天街)をテンポよく楽しめます。主人公である人間の子供九太、九太の師匠であるバケモノの熊徹を取り巻く環境や、キャラクター達が魅力的です。九太と熊徹の漫才のような掛け合いや、修行の様子は主人公の成長をわくわくした気持ちで追いかけられます。異世界での生活のシーンも、独特な世界観の中でも、キャラクターが抱えている背景が見えてくるやり取り(九太と一郎彦、熊徹と猪王山)が面白くもあります。
後半は人間世界(渋谷)での話が多く、バケモノの世界に比べるとテンポが悪かったり、ストーリー展開が曖昧な点が出てきて、わくわく感よりも、キャラクターのセリフ、説明ばかり追いかけて観ているような印象です。後半は九太がどちらの世界で生きていくのか、また九太が人間世界を行き来するきっかけになるヒロイン楓との出会いが描かれ、ストーリー展開上必要な展開ではありますが、キャラクターの魅力が半減してしまったような気がします。
ただ、それぞれのキャラクターの色が様々で、特に後半のキーマンとなる一郎太は魅力的な人物です。一郎太の心の闇や背景などはもっと掘り下げてくれてもいいのに！と思う程、好きなキャラクターです。またその一郎太の父、猪王山も同様です。九太と熊徹、一郎太と猪王山を対比して観るのがおすすめです。