アルキメデスの大戦（映画） 無料フル動画配信情報！Netflixやhuluで見れる？

アルキメデスの大戦は悲惨な殺戮や戦闘シーンはほとんどない希有な戦争映画です。
戦艦大和を作ることから戦争を見たとき、戦争というものが、ただの国民感情から起こるものではなく、一国のほんの一握りの天才や策を練ることのできる人間、どこまでも利益を追及するだけの人間が、作り出してしまうものなんだと思い知らされます。

戦艦大和を勝利の象徴、神格化することによって勝てもしない戦争に突き進ませることが、良いことなのか悪いことなのか、苦悩しつつも、すべてを数式で表しロジックを成り立たせる天才。私利私欲、地位と名誉に翻弄される軍人、政治家。交錯する人間模様が、戦争に突き進んでいく怖さをを、不気味に、それでいて哀しみをふくみつつコミカルにえがかれています。
そのうえ、最後まで飽きさせないのはストーリーのおもしろさだけではなく、俳優さんたちの素晴らしさです。

私のイチオシはやはり山本五十六役の舘ひろしさんです。誰の味方なのか何のために動いているのか。と最期の最期まで引き伸ばしたあげく、おちが、もしかして自分が考えた作戦を実行したかっただけなの？日本のためには動いてなかったの？と言いたくなるようなセリフで終わります。歴史や近代史が苦手な私でも、もう一度第二次世界大戦について調べようと思わせてくれた映画でした。

私たちは生まれてから沢山の物語を見て育ち、ある程度物語のセオリーというものが想像できるようになっています。まぁ、大体結末はこうなるよね、と。しかし本作はそんな予想をふっとばす、一風変わったストーリーなのです。

まず途中まではセオリーに乗っ取っています。数学の天才児が軍艦の設計を頼まれて、ライバルの妨害をかいくぐりながら、それを成し遂げます。設計発表の時間に間に合うか合わないかでドキドキさせられますが、それはもちろん間に合います、はい、セオリー通り。そしてライバルの設計案の不正を指摘し勝利。これも予想通り。普通の映画ならここでハッピーエンディングでしょう。ここまでで、エンターテイメント映画としての使命は果たしていますので。上司との信頼関係、友情、恋愛、スカッとライバルを打ちのめす…。ここで終了しても、ある程度の観客は満足した筈です。そして数日したら、その映画の事は忘れてしまったでしょう。そう、この映画はそこで終わっていないからスゴいんです。ここからが本筋といってもいいでしょう。

影の主役・平山中将と櫂が反目しながらも共鳴してしまう場面。そしてまさかの共犯関係になるという驚きの展開。この場面は数字オタク同志の変態性が感じられて、なんだか興奮してしまいます。この場面があるからこそ、本作はただの消耗品映画にならなかったといえるでしょう。平山中将という日本映画史にも残るであろう、まことの悪党が誕生したのを見られたのも、映画ファンとしては幸せでした。