くるり『songline』レビュー


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2018年9月19日。くるり待望のニューアルバム『songline』がリリースされました。

「『東京』とかと今の違いは…この頃は言葉の人やったんです。今は音の人になった。変わったなーって言う人は、言葉の人だった僕の曲が好きなんじゃないですかね」

2006年10月号、雑誌papyrusインタビューでの岸田繁さんの言葉です。

メジャー・デビュー前にライヴハウスで演奏していた時代の未音源化作品も多く採用したという『songline』に収められた楽曲からは『東京』や『坂道』、『ランチ』『虹』など「言葉の人」だった頃の雰囲気が濃厚に漂っています。
例えば『春を待つ』のどこまでも透明なシンプルさ。
『風は野を越え』の青空を舞うカイトのような、大きくゆるやかなメロディ。

しかしそれらを元に、『TEAM ROCK』『WORLD IS MINE』でのクラブ・ミュージックとの邂逅、『ワルツを踊れ』のウィーンでのレコーディング、交響曲のコンポーズなど様々な道程を経た現在のくるりがアレンジして演奏すると、古臭さも手詰まり感も全く感じられない極上の、言葉と音が一体となったスリリングなポップソングになってしまいます。

タイトル曲『ソングライン』(本来のタイトルは『ハイネケン』でしたが、このアルバムを多面的に象徴する楽曲であるので結果的にタイトル曲になったのは最適解でしょう)の
「外は雨の草いきれのグラウンドで 走る少年の帽子を飛ばす風」
という美しいラインに続く、ラヴェル『ボレロ』のメロディをなぞる管楽、スライドギターとハムバッカーのハードロック的ギターソロがリレーされる長いアウトロは、前述したくるりの歴史を内包しているようで、それが歌のストーリーと合致していて。楽曲それ自体の感動と、くるりの音楽と共に歩んできたリスナーとしての感慨を禁じ得ません。

また、『忘れないように』のBen Folds Five感溢れるアレンジ。特に佐藤征史さんの歪んだベースには、00年頃くるりがレギュラー出演していたFMラジオで同バンドのベーシストRobert Sledgeへの憧れを度々語っていたのを思い出して、ミュージシャンとしての成長と初心を決して忘れない心に、佐藤さんになりたくてフレーズをコピーし弾いていた筆者は不覚にも涙してしまいました。

くるりのここまでのヒストリー、そしてこれからのストーリー。
「今日までの日々は永遠じゃなくて 一瞬だったさ」
良いこと悪いこと、すべてを糧にして誠実に活動してきた彼らの、肩の力が抜けた本当の意味での集大成。傑作です。

聴きこむ編集部ライター 吉田昂平: 大学で映画評論を専攻。映画、音楽、サッカー、野球に情熱を燃やす。バンドでベースとギター経験もある、弾けるライター。

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