映画『オデッセイ』、地上波初放送によせて

愛の列車に乗っていこう

8月3日金曜日、リドリー・スコット監督作『オデッセイ』が地上波初放送されました。
調査中の不慮の事故で火星に取り残されてしまったマット・デイモン演じる植物学者が知識とユーモアを武器にサバイブする姿と、彼を助けるため地球で奮闘する科学者たちの素晴らしさを描いたSFドラマです。

この映画では、ジェシカ・チャスティン演じる船長が火星に忘れた音楽プレイヤーに入っているディスコ・ソングがサウンドトラックの体をとり全編を通し流されます。それがマット・デイモンが置かれた過酷な状況、そのなかでもユーモアを忘れない彼のキャラクターと響きあい、笑いとエモーションを生み出すのです。

例えば取り残された孤独な夜はセルマ・ヒューストン『Don‘t leave me this way』。自動車を走らせるためあるとんでもないモノを燃料にするシーンではドナ・サマー『Hot Staff』。アメリカと中国の科学者が手を組み、救出作戦の準備をする感動的なシーンでは今は亡きデビット・ボウイ『Starman』。特にこのシーンは映像と楽曲の引き立て合いが素晴らしく、必見です。

この映画には大きなテーマがあります。それを表すのはエンドロールに流れるThe O‘jays『Love Train』の歌詞です。

「世界中で手を取り合って 愛の列車に乗ろう
ロシアも アメリカも アフリカも 中国も
みんなで愛の列車に乗り込もう」

未来を信じたくなる最高に前向きで粋なラスト・カットに続き、この歌に乗せて国籍も肌の色も性別もバラバラな人たちが力を合わせて何かを成し遂げるため邁進する姿が描かれる。製作当時78歳のリドリー・スコットによる力強い肯定力に圧倒されてしまいます。

『ブレードランナー』『グラディエーター』『悪の法則』。リドリー・スコットはキャリアを通して差別、偏見に強い嫌悪感を示し、巨大で非情なシステムにプライドを持って抗う個人の姿を描いてきました。その到達点と言える『オデッセイ』。老いてなお強くなった彼の本質、信念をぜひ感じてください。

 

聴きこむ編集部ライター 吉田昂平: 大学で映画評論を専攻。映画、音楽、サッカー、野球に情熱を燃やす。バンドでベースとギター経験もある、弾けるライター。

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