Vampire Weekend 過去と未来を繋げるポップミュージック
29日グリーン・ステージの大トリ、Vampire Weekend。2008年のデビュー以来、2013年までに3枚のアルバムをリリース。そのどれもが音楽のみならずポップカルチャーへの深い造詣と愛に満ちた傑作です。しかしそれ以降、クリエイティビティにおいて大きなロールを担っていたメンバー、ロスタムが脱退。ファンは大きな不安を感じつつ動向を見守っていましたが、今年のフジロック前にリリースが噂されていたアルバムは完成せず。正直なところ、筆者がフジロック現場で耳にした感覚からも前評判や期待値があまり高くはない、観てみないとわからない、という雰囲気がありました。
結論から先に言えば、それは全くの杞憂でした。
定刻21時。ロングスリーブのスウェット、白のハーフパンツに白スニーカーのエズラ・クーニグがスクリーンに映し出された瞬間、全員がこう感じました。何人かは思わずそのまま叫んでいました。
「かわいい…!」
そこから『Diane young』が美しくなり響き、『Holiday』で世界中から集まったオーディエンスがジャンプ、ステップ、ダンス!決まった振り付けなんかはありません。ただ好きなように心のままに。国境だ民族だ、そんなくだらないモノなんか関係なく、そこにはただ喜びと愛があります。
中盤にThe Beatles『Here comes the sun』を自分たちの曲とマッシュアップ。ポップミュージックは歴史である、全ては繋がっていて音楽だけじゃなく私たちの生活もその一部であることを感動的に表現したシーンはこのLIVEの、ボブ・ディランとケンドリック・ラマーという新旧最高のソングライターが出演した今年のフジロック全体のハイライトでした。
終盤、なんとHAIMのダニエルがステージに。 Thin Lizzyの『Boys are back in town』のカヴァーを軽やかに、大名曲『Obvious Bicycle』を美しく感動的に共演して、LIVEは終了しました。「必ず次は新しい曲を連れて来日するからね!」というエズラの言葉を残して。
大きな美しい月明かりに照らされて、見ず知らずの人たちと何度もハイタッチをしました。笑顔、笑顔、笑顔。明日からそれぞれの場所、それぞれの日常に戻っても、この時の喜びを忘れることはないでしょう。
聴きこむ編集部ライター 吉田昂平: 大学で映画評論を専攻。映画、音楽、サッカー、野球に情熱を燃やす。バンドでベースとギター経験もある、弾けるライター。