くるり 〜大事なことを忘れないように



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くるりがニュー・シングル『だいじなこと/忘れないように』をリリース、シェアしました。

『だいじなこと』はフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドにくるりらしい柔らかさを付加して、岸田さんの風のような歌を包み込んだ、極上の焼き菓子のように軽やかな逸品。転調の気持ち良さにとろけてしまいそうになります。

『忘れないように』は約20年前に書かれていた未発表曲。「Go let it out,go let it be」というリフレインが表すオアシス、ブラー、スーパーグラスなどのブリット・ポップ感、昨年のBECK『Colors』にも通じる遊び心溢れる90s感が愛らしい一曲です。

『だいじなこと』は日本の音楽シーンに異例と言える、たった1分50秒のトラックです。ラジオやテレビで耳にした人は驚いたのではないでしょうか。しかしそこに凝縮されたポップの粋に、何度も何度もリピートしたくなります。

これはストリーミング普及以降の海外のシーンで主流となりつつあるスタイルです。XXXTENTACION、フランク・オーシャンなど鋭い感性を有するアーティストはフィジカルの呪縛から解き放たれたことで、楽曲やストーリーに最適な長さで次々と新しい音源をシェアしています。また、再生回数を稼ぎやすいというシステム、経済上の利点も当然あります。その動きをくるり、岸田さんのアンテナは敏感にキャッチしていたのでしょう。

思えばくるりはいつだって、探究心に正直であるがゆえに常識や慣習の囲いから食み出していくバンドでした。繰り返されるドラマーの交代。『ワンダーフォーゲル』から続くクラブ・ミュージックへの接近。60年代UKロックへのコンセプチュアルな回帰。ウィーンでのフル・オーケストラとのアルバム制作、共演。またルックス面で言えば、フロントマンがメガネをかけているのも当時のメジャー・シーンでは本当に珍しかったものです。受け取り側、送り手側が勝手に作った囲いを軽々と飛び越え揺さぶりをかけていく。そんなアーティストとして本来あるべき姿はチャットモンチー、ceroら後進に多大なインスピレーションと勇気を与えています。

「いつだって、くるりは本当のことを言うためのバンドだった」とベスト・アルバム『TOWER OF MUSIC LOVER』をリリースした2006年に岸田さんはブログに書いています。あれから12年。その時の本当のことを言うため、大事なことを忘れないように。くるりはこれからも変わり続け、「こうあるべき」という既成概念から食み出していくのでしょう。

 

聴きこむ編集部ライター
吉田昂平: 大学で映画評論を専攻。映画、音楽、サッカー、野球に情熱を燃やす。バンドでベースとギター経験もある、弾けるライター。



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