メランコリーを蹴りあげろ ジェイ・ソム Jay Som『Anak Ko』に寄せて

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ジェイ・ソムの『Anak Ko』をApple Musicで聴く

「Let’s Go!!」「Yeah!!」
客席にガッツリ届くほど大きな掛け声で気合いを入れて出てきたスラッシュのような出で立ちのジェイ・ソムとギター、ベース、ドラム3人のサポートメンバー。

「ベッドルーム・ポップだと思って来た人、ごめんなさいね!!」

そんなふうに舌を出すのが見えるような轟音をStratocasterが鳴らして、フジロック2019のRED MARQUEEは至福に染まり、やがて悦びに震えました。

2019年8月21日。
タガログ語で「My Child」を意味するタイトルを冠したアルバム『Anak Ko』が日本先行でリリースされたジェイ・ソム(Jay Som)は1994年生まれ、フィリピンにルーツを持つカリフォルニアのSSWです。

シューゲイザーとドリーム・ポップ、そして左腕にアートワークのタトゥーを彫るほど心酔するデスキャブ・フォー・キューティーらの影響を受けながら、9歳から学んできたジャズの素養、自身のルーツであるフィリピンのリズム感覚をエクレクトして独創的な音世界を構築しています。

それがよく表象されるのが、昨今のポップスには異例な長いアウトロです。音楽的に豊潤なインプロビゼーションからは優れた青春映画のエンドロールを眺めているような余韻を、陽だまりのなかでポケットのなかのチョコレートが溶けてしまっていた時間を引き延ばされているような感覚を覚えます。
先述したデスキャブ・フォー・キューティー初期の名曲『Line Of Best Fit』にも通じる、USインディの美しき血脈です。

この秋、ジェイ・ソムはUSインディを今後背負うことになるだろうトップランナー、Clairoの北米ツアーに同行することが決定しています。
活動の幅が広がっていますが、本人はいずれ裏方に回る意向を公言しています。確かにジョン・ブライオンを思わせるプロデュース・ワークは10年後20年後のグラミー、あるいはアカデミーにもリーチする未来を予見させるモノです。

だからこそ今のジェイ・ソムの、「今しか感じられない西日」のような音楽は必聴であり、『JUNO』や『ゴーストワールド』の主人公たちのその後を重ねたくなる、メランコリーを蹴りあげるようなパフォーマンスは必見なのではないでしょうか。

次の来日公演の実現が待たれます。

ジェイ・ソムの『Anak Ko』をApple Musicで聴く
ライター紹介 吉田コウヘイ
在野にて評論活動修行中。
アメリカン・ニューシネマ、五月革命、サマー・オブ・ラヴ、ウィノナ・ライダーの信仰者。
Twitter:tele1962
Instagram:telecaster0225

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