メメント・モリ、祈りと踊り Yogee New Waves『BLUEHARLEM』に寄せて

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2019年3月20日。
Yogee New Wavesが3rd Album『BLUEHARLEM』をリリースしました。

Yogee New Wavesの『BLUEHARLEM』をApple Musicで聴く

2018年5月。メジャー移籍第1弾EP『Spring Cave e.p.』リリースに伴うツアーのファイナル、新木場STUDIO COAST公演の記憶は全く色褪せることなく、筆者の脳裏に焼きついています。

カラフルな服に彩られたフロア、キラキラ光る銀色のミラー・ボールの間のステージでたゆたうグルーヴ。
喜びを全身にみなぎらせて天真爛漫に歌い舞う角舘さん、ドラムの粕谷さん。その縦のラインをがっちりサポートしながら機を見て前へ出るギターの竹村さんとベースの上野さん。
メンバーが固まって1年。まさに発展途上の、ミュージシャンとしてアーティストとしてキャリアを積んできた4人が集まったバンドとしての思春期、成長期の輝きはあまりに力強くて眩しくて。

あれから1年が経ち、届けられた新作『BLUEHARLEM』は前作『WAVES』、『Spring Cave e.p.』の抜けるような青空に浮かぶ太陽が傾いて訪れた、湿気を帯びた夜の風がシャツの下を吹き抜けるグルーヴィな傑作になりました。

Homecomingsの畳野彩加さんがゲスト参加、角舘さんとの親密なハーモニーが美しい『blueharlem』で出発。
壮大なサウンド・スケープを描く『Summer Of Love』、大手タイアップ・ソングとして幅広く聴かれ、多くの若者の日常を踊らせた軽快で切ない名曲『CAN YOU FEEL IT』。

ここまでの3曲、そしてギター・マガジンの特集記事を通して知ったErnest Ranglinにインスパイアされて作った、中南米の空気が漂う『past song』が素晴らしい後半で充分に傑作なのですが、この『BLUEHARLEM』のキモは中盤の3曲です。

リード・トラック『Good Night Station』。雨のSEに重なるギターの単音リフ、雨粒が地面に跳ねる音を演出するリヴァーブの響きから始まる、5分ちょっとの短編映画。
「雨が好きなんだ。愛し合いたくなるから」というウディ・アレンの映画を思わせる、角舘さんの甘い声が際立つ極上のロマンティズム。

「シンプルにリズム隊が良くなりました。スロー・グルーヴの中に音を置くだけでいい」

インタビューで語られている通り、重ねた時間と信頼によりこれまでの作品と比べて格段にグルーヴするようになった粕谷さんのドラムと上野さんのベースにより角舘さんの歌と鍵盤、そして竹村さんのギターが自由度とクリエイティヴィティを増しています。

ギター・ソロはフレーズはもちろん、ラージ・ヘッドのストラトキャスター独特の太くかつきらびやかなトーンが絶品です。
そこに角舘さんの、松本隆『微熱少年』、村上春樹『風の歌を聴け』を思わせる語りが優しく添えられる。

「80桁の電波はジャックできるってあの子が言ってた」
「剥がれたシール、消えた名前」

このコンバインでピークを迎え、緩やかに次曲『suchutoshi』へと続きます。

「流星群またがって 見下ろした天使の街並み」

イントロの鍵盤の音色と低く漂うベースで決まりの、ライヴでゆらゆら揺れるのが本当に楽しみな浮遊感溢れる素晴らしいトラックです。

中盤3曲のラスト。
水中都市から上昇した水面近くの、太陽の光を含んだ緑色の輝きを思わせるシンセの音色と静謐なギターのアルペジオで始まるのは、スロー・バラード『emerald』。

「君のオープン・コードに帯びる 拙さの奥に隠した美しさが目にしみる」

友人にギターを教えていた時に感じたことが、恋人への愛しさの本質に、音楽の、表現行為自体の本質の再発見に繋がっていく。
バンドのアシストで角舘さんの感受性の豊かさが存分に発揮された、アルバム屈指の名曲です。

「僕はいつも死とセックスについて歌っている」

スピッツのヴォーカル、草野マサムネさんの言葉です。

『Good Night Station』『suichutoshi』『emerald』。この3曲には濃厚に「死とセックス」の香りが漂っています。

今作に大きな影響を与えたというメキシコ旅行での体験。そこで得たのはある種の、メメント・モリのイメージなのではないでしょうか。
メメント・モリ。ラテン語で「死を思い、今を生きろ」。
祈りと踊り、僕たちが音楽を求める理由。

1st『PARAISO』、2nd『WAVES』、そして今作『BLUEHARLEM』。
三部作として位置づけられた楽曲たちが共鳴して、どのようなストーリーをステージで描き出してくれるのか。
GREENROOM FESTIVALなどのイヴェント出演、何より雨降る風待ち月、6月から始まる全国ツアーに期待が高まります。

Yogee New Wavesの『BLUEHARLEM』をApple Musicで聴く
ライター紹介 吉田コウヘイ

在野にて評論活動修行中。大学では映画と政治社会運動の関わりを研究。

五月革命、アメリカン・ニューシネマ、サマー・オブ・ラヴ、ウィノナ・ライダーの信仰者。

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