GRAPEVINE 『ALL THE LIGHT』すべてのありふれた光について

LINEで送る
Pocket

メジャー・デビューから22年。
GRAPEVINEが16枚目のAlbum 『ALL THE LIGHT』をリリースしました。

意表を突くアカペラのコーラスで、母音が「a」の言葉のみで歌詞を構成、リスナーの感性を開かせるアペリティフ『開花』。それに続くホーンをフィーチャーしたグッド・ヴァイブレーションな先行シングル『Alright』で幕を開ける42分間。
以降もそこかしこ、すみずみにハッとするアレンジ、言葉、コードが頻出します。

『雪解け』のアコースティック・ギターのザックリしたカッティングとクリーンなアルペジオ。これでいい、となりそうなところにパワー・コードを刻むディストーション・ギターを重ねる。一工夫で楽曲の根を張る生命感、春の悦びが増幅されます。

『NOS』で取り入れたブルックリンなサウンドを消化し手法として楽曲世界に落とし込んだ『ミチバシリ』。
全てのパートが高く舞い上がる壮大な『Asteroids』と、続くエレクトリック・ギターの弾き語り『こぼれる』。

フランク・オーシャン『Self Control』を思わせるトーン、プレイが深みを増した田中和将の歌声を引き立てます。

その余韻を噛みしめるように、ギター、ベース、キーボードが再会して静かに妖しく絡み合い始まる『弁天』。仏教がその過程でヒンドゥー教から咀嚼した女神を題に語られるのは、古くから続く搾取の構造。
「囮と知らず捕らえられたのか 都合のいい君は消費者」
「成熟した政治が 税を課して性にする」

思えば彼らは、田中和将はずっと憤ってきました。言葉遣いが遠回しだったり文学的だったりするけれど、デビュー以来変わらずアイロニーとアンガーを込め続けています。

「リスナーが、シーンが育たないのは演者とメディアのせい」
「離乳食みたいな音楽を作ってそれを宣伝してるから」
「観客に同じ動きさせているような連中ばっかりのなか俺らのLIVE来てくれてアリガト!!」

「誰も傷つけない」表現なんか表現じゃない。その先には真っ暗な闇。本音をぶつけた先にしか光はないのです。

その先の光。おおらかなグルーヴでアメリカのハイウェイ、田舎道を走らせるような『Era』。スライド・ギターが透明な風、浮遊感を醸します。

これまでのGRAPEVINEなら、ラストは茶目っ気、ユーモアのあるパロディ的ロックナンバーで終わらせていたかもしれません。
しかし『ALL THE LIGHT』ではここで最もポップなリード・トラック『すべてのありふれた光』を堂々と鳴らします。

アンソニー・ドーアのベストセラー小説『すべての見えない光』からインスピレーションを得たのかもしれない、儚くも美しい世界観。

跳ねたベース・ラインに乗せて「忘れるための、忘れるだけの…それは違う!!」といつになく強く首を振った後に続くアルバム最後の言葉は、過去の自分に向けてのものなのかもしれません。

「特別な君の声が聞こえるのさ 届いてるのさ」
「君の味方なら ここで待ってるよ」

1年半に1枚はアルバムを作り、ツアーを回る。フェスにも出る。現役として転がり続ける。

サイド・プロジェクトやサポート参加はしつつも、GRAPEVINEとしての活動を22年間停止させることはありませんでした。たとえバンドを始めたリーダー、西原誠さんが脱退したときでも、彼らは転がり続けたのです。

そこには飄々とした姿勢に隠された、とてつもないロマンチズム、パワーがありました。今作『ALL THE LIGHT』にはそれが、剥き出しの彼らのコアにいつもよりちょっと強く光が当てられています。

プロデューサーとして招かれた、1st Album『退屈の花』、2004年のmini Album『Everyman, everywhere』とGRAPEVINEのキャリアの中ではかなりエモーショナルな、かつしっかりツイストした2作に関わったホッピー神山氏の仕事が実に効果的です。

ある意味では『退屈の花』と『ALL THE LIGHT』は共鳴している、と言えるかもしれません。

『退屈の花』のリード・シングルにして代表曲、メイン・メロディ・メイカーである亀井亨さんが初めてオリジナルとしてメンバーに聴かせたエヴァーグリーンな輝きを放つ名曲『君を待つ間』。

「柔らかな光に騙されながら 行こうじゃない」

「泣きそうな顔 きっとバレてしまう」

「いつまでだって待っているから」

22年間の時を経て再会した、望みの彼方で待っていた自分。いつだって何度だって、またここから始まる。
音楽を、それぞれが信じた道を行く歩みを止めなければ、きっとまた会える。

さあ、行こうじゃない。

そんな名曲、名盤が生まれました。

ライター紹介 吉田コウヘイ
映画、音楽を中心に在野にて評論活動修業中。大学時代は映画と社会政治運動について研究、論文執筆。
五月革命、アメリカン・ニューシネマなどカウンター・カルチャー・マニア。
Twitterアカウント:tele1962

口コミする

コメントするには ログイン してください
  購読  
次を通知