GRAPEVINE 『Alright』レビュー


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11月28日。GRAPEVINEが2019年2月6日にリリースされるNew Album『ALL THE RIGHT』からのリード・トラック『Alright』をシェアしました。
ワンカット長回し。レオス・カラックス、ニコラス・ウィンディング・レフンを思わせるクールなMVも必見です。

いつになく黒いフィーリングを感じさせる西川弘剛のギター。楽曲、アンサンブル全体を引き立たせる安定した亀井亨のドラム。絶妙にアクセントをつけながら後半でグッとギアを上げ前面に出てくる高野勲のキーボード。色気全開で引き過ぎず出過ぎず、グルーヴィに腰を揺らしてくれる金戸覚のベース。

その上を堂々と、高らかに舞う田中和将の艶やかなヴォーカル。

キャリア初期はその涼しげなルックス、いつまでも若さを失わないミステリアスさも相まって中性的な魅力を放っていた田中和将のハイトーン・ヴォイスですが、40歳手前から声に野太さ、艶やかさが加味され、上質なワインやウィスキーのようにより幅広く深いニュアンスが表現できるようになりました。
元々初期からマーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイを憧れとして挙げ、「いやー、黒人はズルいです」と笑っていましたが、その憧れに確実に肉薄していること、成長が『Alright』でハッキリ実感できます。

デビュー20周年を意図して制作された前作『ROADSIDE PROPHET』はこれまでのキャリアを総括するような、UKロックの色合いを強く感じさせる作品でした。

その先、新章の始まりとして届けられた『Alright』からはアメリカの色合いが、バンド名の由来であるマーヴィン・ゲイの名曲『I heard it through grapevine』の匂いが感じられます。

ホーンを加えたアレンジを「新境地!」とする言説を目にしますが、3rd Album『HERE』の最終トラック『南行き』で既に大々的にホーンを導入しています。茶目っ気、ネタ的なホーンの導入だった『南行き』から、それと堂々と渡り合うバンド、ヴォーカルのスキルアップは聴き比べれば明らかです。

「南へ行きたいのさ 涙も少しはこぼれるさ」『南行き』

「今大人になって 或いは親になってさ 何もかもが全部遠く感じてる」『Alright』

あの頃探していたアメリカ、憧れていたアメリカ。
円熟の先で鳴らされるのは肉体的で官能的なソウル、ブルース。

売れた売れない、代替の効く販促物でしかない日本の音楽シーンの伝説なんかいらない。ちょっとは憧れたかもしれないけれど。

UNISON SQUARE GARDEN、NICO TOUCHES THE WALLSらGRAPEVINEに憧れてきた今最も脂の乗っている世代のバンドたちにとって、その姿がどれだけ勇気を与え、指標となっていることか。

転がり続けてきたからこその境地に、現在のGRAPEVINEは達しているのです。

ライター紹介 吉田コウヘイ
映画、音楽を中心に在野にて評論活動修行中。大学ではケン・ローチ、アキ・カウリスマキらを題材に映画と社会・政治運動について論文執筆。フラワー・ムーヴメント、五月革命、アメリカン・ニューシネマらカウンター・カルチャー信仰者。
Twitterアカウント: tele1962

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