すべての不機嫌なボーイズ&ガールズへ Rei 1stフルアルバム 『REI』に寄せて


LINEで送る
Pocket

ギタリスト、シンガー・ソングライターReiの1st フルアルバム『REI』がリリース、シェアされました。

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lA1ALkC-fLky_94TK_7gVZ-ganOxfeLfM

これまで2015年のデビューから『BLU』『UNO』『ORB』と3枚の7曲収録ミニ・アルバム、2017年には4曲収録EP『CRY』をリリース。1音下げチューニング、サムピックを使用して時にかき鳴らし、時にブルージーなソロをキメるギタープレイ、BECKを思わせるサンプリング感覚溢れるクールなサウンド、「Facebookのいいね!6件のヒーロー」『COCOA』など遊び心と知性を感じさせる歌詞で音楽好きの注目を集めてきました。

リッケンバッカー、ジャズマスター、フライングVと作品毎にメインギターを変えヴィジュアル面もプロデュース、スタイリストがファッションの方向性をディレクションすりように、様々な音楽性にチャレンジ。ある種コンセプチュアル・アートのように多彩な表現活動を展開してきました。昨年にはフランスでのフェスやアメリカのプレゼンテーション・プログラム『TED』にも出演。国外にもプレゼンスを高めています。

大きな注目を集めた1st フルアルバム。今回チョイスされたギターは自身のルーツであるジョニー・ウィンターが愛したGibsonファイヤーバード。タイトルは自身の名を冠した『REI』。2018年を生きる20代のアーティストとしての自らを堂々と宣言する快作となりました。

「シンプルに生きよう、シンプルに愛そう」 『Arabic Yamato』

全12曲、42分間。偉大な先輩セイント・ヴィンセントを思わせるファズの効いた硬質なギターリフとエレクトロ・ビートが強烈に絡み合う『BZ BZ』。黒いリズムの上でニュアンス豊かなギターと堂々としたラップが動き回る『My Name Is Rei』。今作のベスト・トラック、CHAIをゲストに迎えた何処までもキュートなサーフ・ポップ『Follow the Big Wave』。6曲目のアビエントな『Dreamin‘』までをレコードのA面、前半としてアッパーでポップな曲で構成。

後半を開放弦の響きを活かしたGフォームのバッキングとadd9コードのアルペジオが心地よい『Silver Shoes』で緩やかに始め、牧歌的でちょっと高畑勲アニメのエッセンスを含む『Clara』で柔らかく展開。m9のカッティングでフュージョンに攻める『The Reflection』でアクセントをつけて、オープンなコードと大きなメロディでじっくり聴かせるTHIS IS LAST SONGな『Arabic Yamato』で大円団を迎えます。

エンドロールは自身の音楽の原点、クラシック・ギターによるインスト・ナンバー『before sunrise』で儚く切なく、余韻を残して終幕。

作品内世界の完成度、さらにこれまでのキャリアを総括して次の展開への広がり、余白も感じさせる、1stフルアルバムとして全方位に優れた作品と言えるでしょう。

「タレントになろうとするような人、人前に立とうとするような人は、欲望の総量が大きい人だ」

芸人、マキタスポーツが度々口にする言葉です。

『REI』を聴いて、1人の人間がなぜこんなギターを弾けてこんな歌詞を書けてこんな曲を作れてこんな1stフルアルバムを作れたのだろう?と考えたときにこの言葉が浮かんできました。

Reiは、この見目麗しい才女はきっと、人一倍欲望の総量が大きいのでしょう。

「学生の頃はバンドをたくさん組んでたんですけど…儲けはひとりじめしたくて(笑)」
「私自身は凄くselfishなところがあるんです。プリンが2つ冷蔵庫にあって兄弟がいても、素知らぬ顔で2つ食べるような人なので」

一歩引いて、欲を出さない。そんな姿が美徳とされてきた、いまだ根強く居座っているこの社会で、そんなもの御構い無しに不機嫌そうにギターを鳴らし「答えなんて見つかんない It’s been a hard day’s night」と歌うRei。
そのクールネスは前述のセイント・ヴィンセント、イギリスで闘う19歳、superorganismのオロノとも共鳴しています。

アルチュール・ランボー、ピート・タウンゼント、デヴィッド・ボウイ、パティ・スミス。
いつだってこの世界に風を吹かせてきたのは不機嫌な顔をした、充たされないボーイズ&ガールズの欲望です。それがポップ・カルチャーなのです。

聴きこむ編集部ライター 吉田コウヘイ
映画、音楽を中心に在野にて評論活動修行中。フラワー・ムーヴメント、五月革命、アメリカン・ニューシネマらカウンター・カルチャー信仰者。

口コミする

ログイン せずにコメントも可能です(投稿名とメールアドレスは必須ではありません)
  購読  
次を通知