SPINN ライブレポート ベッドルームから世界へ


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先ずはこの曲を聴いてください。リヴァプール出身の4ピース・バンド、SPINNが8月にリリースした『Shallow』です。

真っ直ぐに突き進むドラム、一聴してプレシジョンのピック弾きとわかるメロディアスに動きまくるベース、アルペジオが眩しく輝くギター、蒼く澄んだヴォーカル。スミス、キュアー、ストーン・ローゼスとその影響を受けたオアシス、ブラー、初期デスキャブ、THE 1975らのエッセンスを凝縮させたような。映画「シング・ストリート」からそのまま飛び出してきたようなギターポップです。

リヴァプールというとザ・コーラル、Trudy and the Romanceら煉瓦道を思わせる、フォーキーでスモーキーなアーティストをイメージしがちですが(それももちろん素晴らしい特色ですが)、SPINNの楽曲はどれもクリアに澄んでいます。汗やアルコールの匂いよりも品の良さ、育ちの良さが透けて見えてきます。

10月26日、新代田FEVERにて初の来日公演が行われました。この3日前に渋谷でショーケースの出演をしていましたが、100人以上を集客しアンコール含め15曲以上を演奏したこの日が実質初公演でしょう。

先ずは日本の5ピース・バンド、Luby Sparksがクールに会場の熱量を上げます。
女声と男声のツイン・ヴォーカルを押し出している彼らですが、筆者が強く惹かれたのはベース・ヴォーカルを務めるNatsuki Katoのベース・プレイ。シティ・カラーの鮮やかなスカイブルーのリッケンバッカーで、ブリッジ・カヴァーを装着したままハードにピッキング。そのサウンド、そして細身のペイズリーシャツを纏う立ち姿の美しさにすっかり魅了されてしまいました。
ギター、ドラムも20代前半とは思えない高いレベル。これからも自分たちのスタイルを通してシューゲイズ・サウンドを突きつめてほしい、そう思わせるクールなステージングでした。

続いて、大きな拍手に迎えられ登場した主役のSPINN。
マッシュルーム・カットのアンディの黒いリッケンバッカー330から放たれるアルペジオ、「タワレコシブヤ」と書かれたTシャツを着た、丸顔カーリーヘアのショーンが弾くベース・ライン、テクニック的にはバンド内で突出しているルイ・オライリーのパワフルなドラムが絡み合い、その上をヴォーカルのジョナサン・クインがクネクネとベッドルームからそのまま飛び出してきたかのように踊りまわる。初めて聴いた瞬間のイメージがそのまま目の前で繰り広げられます。

中盤では2回、アンディが入りのコードをミスして思わず「Ahh!」と声を漏らすシーンも。しかし他のメンバーがしっかりフォローしてハッピーなテンションをキープし続けます。活動開始からたったの3年。まだまだ伸び盛り真っ最中故のナイーヴさではあるのだけれど、だからこそバンドとしてのコア、個性やチャームが剥き出しになっています。大人による押しつけや、1人の突出したエゴによるかき集めでは決して得られないグルーヴです。

存分に踊り踊らせ、海外アーティストの初来日公演としてはかなり珍しいほど多くの楽曲を演奏し終わった本編。鳴り止まないアンコールの拍手に応え出てきたジョナサンがキラキラの笑顔で語ります。
「ありがとう!けどアンコールする予定なくて、持ち曲全部やっちゃったんだよね。もう1回『Notice Me』聴いてくれるかな?大丈夫?オッケー!!」

僕に気づいて、僕に気づいて。
イギリスの地方都市のベッドルームでこんがらがっていたブルーたちが窓の外の空気を揺らして家の前の通りに風を吹かせて、やがて極東のフロアを踊らせている。僕らがポップに惹かれる理由がそこにありました。

聴きこむ編集部ライター 吉田昂平
映画、音楽、サッカーなど在野にて評論活動修行中。カウンター・カルチャー・マニア。

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