tofubeats『RUN』レビュー


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2018年10月3日。

tofubeatsの4th ALBUM 『RUN』がリリース、シェアされました。

フレーズ、リズムがポリフォニックに重なり合うことでイメージされる無限に続くかのような夢幻のフラッシュバックの中、それが不意に止んだクライマックスにピアノのみで歌われる
「僕らはただ走るのみ」
というフレーズが胸に突き刺さる2分弱のタイトル・トラック『RUN』。
乃木坂46に提供される 予定だった『ふめつのこころ』、プロデュースした向井太一『Siren』に‘近い80s後半、90s前半を思わせる『MOONLIGHT』までのポップサイドに振り切れたグッドソング集の前半。
『You Make Me Acid』『RETURN TO SENDER』『BULLET TRN』でディープに揺れ踊り、その流れ、残響を感じながらうっすら認識能力が覚醒していくような『NEWTOWN』『SOMETIMES』。
「音楽が終わってしまった、自分だけがいる」
と目覚めて気づいてしまう祭りのあとの虚無感を美しく歌う『DEAD WAX』でエンディングを迎え、映画『寝ても覚めても』主題歌『RIVER』がエンドロールに流れる。

見事に演出された一本の長編映画を観たような、ストーリーがある構成。まったく散漫になっていないのは、サウンドメイクはもちろんtofubeats本人によるヴォーカルが語り手としての確かな、2018年のこの時を生きている都市生活者としての実在感をリスナーに与えるからでしょう。

このテクスチャーは、2000年に発表されたくるりの『TEAM ROCK』を思わせます。そういえばあのアルバムの最終曲は『RIVER』であり、その歌詞世界は『寝ても覚めても』と共鳴しています。くるりとtofubeats。時間を超えた、京都と神戸の若き才能の揺らめき。

『寝ても覚めても』では物語中盤のターニング・ポイントとして、濱口竜介監督いわく「他者の代表」として、2011年に起きた東北の大震災が描かれていました。その映画音楽制作を経て発表されたこの『RUN』では、tofubeatsの地元神戸で彼の幼少時代に起こった阪神淡路大震災がトラックの、リリックの背後に聴こえてくるように感じます。

悲劇のあとに続く世界を誠実に生きること。そのためには「僕らはただ走るのみ」なのでしょう

聴きこむ編集部ライター 吉田昂平
加藤幹郎「映画とは何か」を読み批評活動に魅了される。音楽、映画、サッカーなどについて在野で活動中。

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